2022年6月27日月曜日

Intyego Tips 〜Appleによる計画的陳腐化なのか: iOS 16およびmacOS Venturaは多くのモデルに非対応〜

 

Appleによる計画的陳腐化なのか: iOS 16およびmacOSVenturaは多くのモデルに非対応

(この記事は、2022年6月14日にKirkMcElhearn(https://www.intego.com/mac-security-blog/author/kirk-mcelhearn/)によってMacSecurity Blogに投稿されたApple’s Planned Obsolescence: iOS 16, macOS VenturaDrop Support for Many Modelsの翻訳です)

「計画的陳腐化」という考え方は、100年くらい前から存在しています。自動車市場の飽和による販売不振に対応するため、GMが毎年新型車種を発売しようと決めたのが始まりとされています(
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E7%94%BB%E7%9A%84%E9%99%B3%E8%85%90%E5%8C%96
)。もちろん、一般的な概念としてはそれ以前にも存在していました。ファッション業界では毎年デザイナが何を売るか決定し、そうして出てきた新しいデザインによって実は必要ではない新しい洋服を消費者に買わせようとしてきました。こうした考え方は、今では多くの業界に浸透しています。特に消費財、例えばコンピュータで顕著です。

電化製品について言えば、計画的陳腐化は技術の進歩とも関連しています。ジャンルによっては、新しい技術が目に見える新機能に直結しないこともあります。冷蔵庫、電子レンジ、CDプレイヤ、スピーカなどは、プロセッサの処理能力とほとんど関係がありません。なので何年経っても、大きな変化がありません。古くはなっていきますが、20年以上使われるキッチン家電も珍しくないでしょう。

しかしより高速なチップや新しいプロトコルの恩恵を常に受けているコンピュータでは、新しい機能を使うために製品をアップグレードしたいと考えるのもわかります。でもよく考えたら、ちょっと前の年代のiPhoneが最新iOSの機能に対応できないほど古臭くなってしまっているのか疑問もあります。例えば、最新iOSの一部の機能が使えなかったとしても、アップデートに対応さえしていればセキュリティパッチは適用し続けられるので、頻繁に製品を買い換える必要もなくなって、よりエコなんじゃないでしょうか。

世界一価値がある会社であるAppleは、その計画的陳腐化に対して、特にiPhoneに関して多くの批判(
https://www.firstpost.com/tech/news-analysis/apple-to-pay-consumers-3-4-million-in-a-lawsuit-over-programmed-obsolescence-of-iphones-in-chile-9507131.html
)、調査( https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-42615378 )、そして訴訟(
https://9to5mac.com/2021/03/01/apple-lawsuit-portugal-planned-obsolescence/
)の標的になってきました。

先日発表された新しいオペレーティングシステムでもAppleはそれほど古いとは言えない多くの機種を対象から除外する予定ですが、これが新しい製品を買わせる目的だとしてまた批判されるでしょう。それは公平な意見でしょうか? 性急に結論に飛びつかないように、この問題をもう少し深く見てみましょう。

■多くの古いiPhoneがiOS 16に対応しません

iOS 16の対応機種が発表されましたが、AppleがiPhone
8より前に発売された全てのデバイスを対象外にしたことで多くのユーザがガッカリしています。Appleは2016年に発売したiPhone
7を、より新しいiPhone
8が登場した後も2019年9月まで廉価版iPhoneとして販売し続けました。ということは、販売が終了する直前にiPhone
7を買ったユーザは、たった3年前に買ったスマートフォンなのにもうアップグレードができないことになります。iPhone
6Sおよび6S Plusは、2018年9月まで販売されましたし、初代iPhone
SEも同様で、これらのデバイスもアップグレードできません。
https://www.intego.com/mac-security-blog/wp-content/uploads/2022/06/iphone-spreadsheet.png

最も驚きなのは、直近のiOS 13からiOS 15までの3個のiOSバージョンでは、変わらずiPhone
6Sまで対応していたという事実です。これらの旧型デバイスのユーザは、自分のスマートフォンを長く愛用できると感じていたことでしょう。誤解のないように書いておくと、6Sは2015年に発売されてから5年半後の2018年9月に販売終了したのですが、その後もiOSのアップグレードに対応したので合計で7年間とスマートフォンとしては長く使えた製品と言えるのです。

iOS
16に対応しないiPhoneのユーザは、その新機能が使えないことで落胆しているだけでなく、デバイスのセキュリティについて不安を持っています。iOS
15が公開された時、Appleはユーザが「重要なセキュリティアップデートを利用しつつ、一定期間はiOS
14を使い続けることもできます」としましたが( https://www.apple.com/jp/ios/ios-15/features/
)、この一定期間とは36日間だけだったのです。AppleがiOSおよびiPadOS
14(バージョン14.8.1)のために公開した最後のアップデートは2021年10月26日で、iOS
15が公開されてからわずか5週間後でした。

ちなみにAppleのiOS 15で利用できる新機能ページには、今でも「重要なセキュリティアップデートを利用しつつ、一定期間はiOS
14を使い続けることもできます」と書かれています( https://www.apple.com/jp/ios/ios-15/features/
)。
https://www.intego.com/mac-security-blog/wp-content/uploads/2022/06/Screen-Shot-2022-06-13-at-15.31.03.png

もちろん36日だって「一定期間」だと言い張ることはできるでしょうが、Appleにはこのような誤解を招く表現が多い気がします。この10月のiOS
14.8.1の公開時には、iOS 15の重要なセキュリティ上の脆弱性がパッチされたのですが、iOS
14については拡散していたゼロデー脆弱性を含む脆弱性に対して危険な状態のまま放置されたのです。

2022年5月の時点で、iPhoneの全ユーザの17%がiOS
14を使っていますが、もう自分のiPhoneには重要なセキュリティアップデートが提供されないという事実を意識してはいないでしょう(
https://gs.statcounter.com/os-version-market-share/ios/mobile-tablet/worldwide
)。

iOS 16が対応しないiPhoneの機種に関していうと、Appleがパッチしない危険には晒されたままになりますがiOS
15は使い続けられます。AppleがiOS 16を公開した後でもiOS
15をパッチし続けるか、パッチするとしてどこまで対応するのかは、いずれわかることです。ただし過去の例に照らし合わせるならば、Appleは以前のiOSバージョンの脆弱性を一切パッチしないと考えられます(
https://act2blog.blogspot.com/2022/06/apple.html )。

オペレーティングシステムの新機能というものが、より高速なプロセッサ、より大きなRAM容量、より大きなストレージ容量を必要とするのは事実ですから、Appleが特定のiPhoneの機種を対象から除外するのは自然なことです。しかし持続可能性と環境への負担軽減を標榜する会社であるAppleなら、ユーザが古いデバイスをもっと長く使い続けられるように努めるべきだとも思います。

■M1 iPadのステージマネージャ問題

iPhoneは毎年新製品が出るので、古いデバイスが徐々に対応リストから除去されていくのは当然のことかもしれません。しかし、iPadではそれほど頻繁に新製品が登場しません。ですので、iPadではiPhoneのように古いiPadがどんどん対応リストから除去されることはありません。実際、iOS
16に対応しなくなるiPadは、iOS 12に対応していた製品リストと比較してもiPad Air
2とiPad mini 4の2機種だけです。iPad Air 2はiOS
8を搭載して2014後半に登場したので、iPadの中で最も寿命の長い機種の一つです。iPad
mini 4はその翌年に発売されています。
https://www.intego.com/mac-security-blog/wp-content/uploads/2022/06/ipad-spreadsheet.png

興味深いのは、iPad(第五世代)とiPad(第六世代)は、iPhone 6SおよびiPhone
7とよく似たハードウェア構成であるにも関わらず、iPhoneの方はiOS 16に対応しないのにiPadの方はiPadOS
16に対応すると言うことです。

でも、iPadOS 16の売りの機能の一つはM1
iPadでしか使えません。iPadの先進のウインドウシステムであるステージマネージャは、iPad
ProおよびiPad Air(第五世代)でしか動作しないのです。現在も販売されているエントリーレベルのiPad(第九世代)やiPad
mini(第六世代)では使えません。現在も販売されているiPadで注目の機能が使えないという事実に対して、Appleユーザのコミュニティでは激しい議論が戦わされています。

Appleは「仮想メモリスワップを使用すると、iPadのストレージを使用して、すべてのアプリケーションで利用可能なメモリを拡張できる」とし、この機能には最新プロセッサが必要だと説明しています(
https://www.apple.com/jp/newsroom/2022/06/ipados-16-takes-the-versatility-of-ipad-even-further/
)。逆に言えば、この事実によりM1プロセッサが今後もiPadに登場する新機能に対応する鍵になることが予想できます。

少なくともiPadOS 16では、AppleはiPadOS
15に対応するほとんどのiPadでアップグレードを可能としました。Appleはそうした機種で特定の機能が使えなくてもアップグレードは可能としたのです。一方iPhoneでは、できるかできないかの二択です。

誤解のないように書いておくと、確かにiPadの機種より多くのiPhoneの機種が新オペレーティングシステムの対応リストから除外されていますが、対応する機種の中で最も古いiPhone
8、iPhone 8 Plus、そしてiPhone Xなどで使えないiOS 16の機能もかなりあります(
https://9to5mac.com/2022/06/07/ios-16-exclusive-features-iphone-xs-newer/
)。ですから、Appleが古い製品だからと言って何でもかんでも対応から除外してしまうわけでもありません(逆に、Appleが2020年まで廉価版として販売していたiPhone
8をiOS 16の対応リストから完全に除外していたら、また批判されたでしょう)。

■Macについて

今秋の登場が予定されているmacOS
Venturaでは、ここ最近のオペレーティングシステムに対応してきたたくさんの古いMacが対象外になります。
https://www.intego.com/mac-security-blog/wp-content/uploads/2022/06/mac-spreadsheet-1.png

まず2015年から2017年のMacBook
Airが対象外になるのが、大きな変化でしょう。Venturaは、2019年7月まで販売されていた2017バージョンも対象外としています。つまりmacOS
Venturaが公開される時、その販売時期の末期に購入された機種の3年間のAppleCare契約がちょうど期限切れになることを意味します。MacBook
Proも同様で、2017年の機種はほぼ同時期まで販売されていました。しかしMacにとって、3年はかなり短い寿命だったと言えるでしょう。

2013 Mac Proは、ちょっと異なります。Mac Proシリーズは、2019年12月まで新製品が発売されませんでした。現在のMac
ProはmacOS Venturaに対応しますが、この“ゴミ箱”型Mac
Proをその販売時期の末期に購入しているとするとVenturaが公開された時点でも3年間のAppleCare契約はまだ有効でしょう。“プロ”用Macと呼ばれるコンピュータが、販売終了から3年経たないうちにmacOSのアップデートから対象外になったら残念です(AppleがVenturaの公開時にはパッチされた脆弱性の全てをmacOS
Montereyでも同時にパッチしなければ、macOS
Venturaの公開時点でAppleCare契約がまだ有効なユーザから訴えられる可能性があります)。

Appleは、これまでのオペレーティングシステムでiPhoneやiPadに比べてMacに対してより多くのセキュリティパッチを公開していますが、それでオペレーティングシステムの既知のすべての脆弱性がパッチされたわけでもありません(
https://www.intego.com/mac-security-blog/integos-josh-long-speaking-at-obts-v4-0-mac-security-conference/
)。

AppleのMシリーズプロセッサのMacが将来のオペレーティングシステムにいつまで対応するのかも興味深いことです。多くのユーザにとってMシリーズプロセッサの能力は今後も長く使えるほど強力なので、私は約1年前に「永遠に使えるMac」と書きました(
https://www.intego.com/mac-security-blog/are-we-heading-towards-a-forever-mac/
)。しかし現実世界では、売上という問題があります。Appleは、こうしたMacもこれまで同様にどんどん対応から除外していくのでしょうか?

IntegoのチーフセキュリティアナリストであるJosh Longは、Appleがもうサポートしていない彼の15歳のiMac(Mid
2007)で現在のmacOSを実行しています(
https://act2blog.blogspot.com/2022/05/macos-montereymacmacos-monterey.html
)。つまり理論的に言えば、Appleは対応していない古いハードウェアでも、そのオペレーティングシステムを対応させることができるはずなのです。それはMacだけでなく、iPhone、iPad、そして他のApple製デバイス全般に言えることです

しかし、Appleは古いデバイスを重要なセキュリティやプライバシーの問題から守るより、ユーザに「より良い体験」を与えることに熱心なようです。

次のAppleの充分でないパッチポリシーによりユーザのセキュリティとプライバシーが危うい状態ですという記事も参照ください
https://act2blog.blogspot.com/2022/06/apple.html

■Apple Watch

最もひどい変更は、今年のオペレーティングシステムであるwatchOS 9の対応リストからApple
Watch Series 3を除外したことでしょう。Series
3は、今でも22,800円という破格の値段のスマートウォッチとして販売されています。しかし今日買ったスマートウォッチが、数ヶ月後に登場するオペレーティングシステムに対応しないと言うのは、控えめに言ってもひどい話であり好ましい商習慣とは言えません。

とは言え、デバイスの技術という点ではSeries
3は5年前の2017年に発売された古い製品であり、この製品を買う多くの人は最新製品に比べて機能が劣っていることは理解しているでしょう。Appleは、watchOS
8でもいくつかの拡散している脆弱性をパッチしましたが、元々Apple
Watchのセキュリティ上の脅威は多くありません。なのでセキュリティの問題はさほど問題にならないのかもしれませんが、今でも積極的に販売されている製品をAppleが一晩で旧式にしてしまうのはいただけません。

今後もAppleがwatchOS
8のセキュリティアップデートを公開するのか、今年の後半からセキュリティアップデートが提供されるのがwatchOS
9だけになるのかは、いずれわかることでしょう。Appleの過去の例で言えば、2020年にwatchOSのバージョン5、6、そして7のセキュリティアップデートが公開されたことがありますが、watchOS
8が公開されてからwatchOS
7のセキュリティアップデートは一度も公開されていません。

■iPod touch

Appleは、iOS 16の発表(
https://www.intego.com/mac-security-blog/apple-presents-macos-ventura-ios-16-ipados-16-and-new-macs/
)直前にiPod touchシリーズの販売を終了させましたので(
https://www.intego.com/mac-security-blog/requiem-for-the-ipod-intego-mac-podcast-episode-239/
)、ある意味では、AppleがiOS 16でiPod
touch(第七世代)に対応しないことに大きな衝撃はないでしょう。

しかし、これはAppleがiOS 13の公開直前にiPod touch(第六世代)の販売を終了して第六世代をiOS
12までしか対応させなかった時と似た状況にあるとも言えます。実際、どちらのiPodも新しいiOSバージョン公開の数ヶ月前に販売終了しています(Appleがこれまで同様にiOS
16を9月に公開する前提です)。この5月にiPod
touchを新品で買った人は、購入してから4ヶ月で今後はiOSのアップデートが提供されなくなると一ヶ月後に知ったことになります。

Appleが今後もiOS
15のパッチを提供しないのであれば(そして、多分提供しないのですが)、非常に短い猶予しかなかったということからAppleが訴訟の対象になるかもしれません。iOS
15は、iPhone 6および初代iPad Airなどいくつかのデバイスが対応する最後のiOSとなったiOS
12と似た終焉を迎えそうです。Appleは、iOS
12に対しては過去数年間に散発的なパッチを公開しただけなのです。
https://www.intego.com/mac-security-blog/wp-content/uploads/2021/10/iOS-14.8-patches-addressed-in-iOS-15-updated-20211028.jpg

上図は、2021年9月に当時サポート対象だったiOSバージョンに対して公開されたiOSのセキュリティ修正のリストです。Appleは、それ以降にiOS
12の脆弱性をパッチしておらず、10月以降にはiOS 14の脆弱性もパッチしていません。詳細については、この記事を参照ください(
https://act2blog.blogspot.com/2022/06/apple.html )

■計画的陳腐化なのか、古い技術の当然の引退なのか?

Appleが特定のデバイスを新しいオペレーティングシステムに対応させない理由は、幾つもあるでしょう。新機能がより高速なプロセッサやより多くのRAM容量やストレージ容量を必要とするのであれば、互換性を提供できないことに対して納得のいく説明もできるでしょう。しかし新しいオペレーティングシステムの主な目的の一つが、ユーザにそのデバイスを買い換えさせようすることにあるのも事実でしょう。

iPhoneは毎日持ち歩くため傷が付いたり劣化するので、そのユーザがMacやiPadよりも頻繁に製品を買い替える傾向にあるといった、また別の要素もあります。

とはいえ、Appleは持続可能化とさらに真剣に向き合い、デバイスを可能な限り使い続けられるように注力すべきです。例えば、デバイスのバッテリ能力の低下とデバイスに内蔵されたストレージの容量不足は解決できる可能性があることを、Appleはもっと啓蒙する必要があります。iPhone、iPad、そしてラップトップMacのバッテリをAppleが適正価格で交換していることを、多くの人は知りません。この事実を、もっと明快に周知する必要があります。デバイス内蔵のストレージについても同様で、AppleはデータをiCloudに保存することで内蔵ストレージに空きを作る方法についてユーザにもっと説明すべきです。デフォルトのiCloudストレージの容量を5GBより多くして、デバイス内から退避できるデータを増やしてみせることだってできるはずです。

しかし実際には、最新で最速で最も幻惑的なiPhone、iPad、あるいはMacのよくできた宣伝文句がユーザの注意を惹きつけるわけで、Appleは現在の「乗り遅れの恐怖」を煽るマーケティング手法を取り続けるでしょう。

一方で「乗り遅れることを気にしない」Appleユーザはアップグレードを見送ってしまい、気づかぬ内に危険なセキュリティおよびプライバシーの問題に直面させられることになるのです。

■お使いのMacは安全ですか?

Mac用のセキュリティソリューションを検討しているなら、ACT2の次のIntego製品ページで機能や目的に合った製品があるかご確認ください:
https://www.act2.com/intego