【0】まず、両者の正式名称を「おさらい」しておくと、
PDE とは
Parallels Desktop for Mac Enterprise の略であり、パラレルスデスクトップを企業や学校等で複数導入する際の製品。基本的にはパラレルスデスクトップをベースにしているが随所に企業や学校での利用を目的に機能アップされている。
一方、
VMF7Pro とは
VMware FUSION 7 Pro の略で、VMware 社の FUSION 7 を(PDE と同様に)企業や学校向けに用意された製品。
さて、
【1】法人(企業や学校)としての導入視点から気になるところを比較してみると:
PDE 10 | VMF7 Pro | |
価格 | 企業:10,000 円/ライセンス/年(年間更新式) 学校:5,000 円/年(年間更新式) アップグレードは期間内無償 | 単体ダウンロード:22,672 円/ライセンス 企業・学校:(問合せ) アップグレードは都度有償 |
ライセンス管理方法 | サイトライセンス | サイトライセンス(単体ダウンロードの場合は単体管理) |
導入方法 | 一括展開ツールあり | (未確認) |
サポート | 無償の一次サポートから日本語対応 | 登録後 18 ヶ月間英語によるメール対応付き |
【2】動作環境(導入環境)
PDE 10 | VMF7 Pro | |
対象 OS | OS X 10.7.5 (Lion) 以降 | OS X 10.8 (Mountain Lion) 以降 |
【3】機能仕様
各社のサイトを見ると(当然ではあるが)自社に有利な基準で情報が掲載されているので、フェアな比較がなかなか難しい。ここでは、そうした観念を振り切って、わかりやすく整理してみたい。
まず、P 社の主張:
- USB デバイスのポリシー設定
- Parallels コントロール センターのカスタマイズ
- OS X 仮想マシンでの Netboot 利用
- OS X 仮想マシンでの FileVault 利用
- VM BIOS へのアセット ID 割り当て
- バッテリー持続時間が 30% 長持ちに
- 仮想マシンがデフォルト設定のままでも、Windows 版 Office アプリケーションが 50% 速く起動
- 「リンクされた複製」 - ディスク領域を効率的に使用するための複製を仮想マシンから素早く作成
- シンプルな管理を可能にするシングル ライセンス キー
- 開発者向けに Windows OS 各種 IE 環境を 90 日間何度でもいつくでも無償で利用できる
次に、V 社の主張:
- OS X Yosemite 向けに設計され、Windows 8 の最新リリースに対応
- 最も要求の厳しいアプリケーションを実行できる高性能な仮想マシンの作成
- リンク クローンを作成し、時間およびディスク容量を節約
- カスタムの仮想ネットワーク構成を作成し、複雑な Web またはクラウド環境のシミュレーションに利用
- vSphere に接続して仮想マシンを実行、ダウンロード、アップロード可能
- 仮想マシンに有効期限を設定することが可能
- 64 ビット対応の Intel® プロセッサを搭載した Mac (Core 2 Duo、Xeon、i3、i5、i7 以降のプロセッサとの互換性)
- 2GB 以上のメモリ (4GB 以上を推奨)
- VMware Fusion 用に 750 MB 以上の空き容量、仮想マシンごとに 5 GB 以上の空き容量
- Mac OS X 10.8 以降、OS X Yosemite を推奨
- 仮想マシン用オペレーティング システムのインストール メディア
- 登録後 18 か月間の E メールによるサポート (英語対応のみ)
- VMware Fusion 7 の新規のお客様は、McAfee AntiVirus Plus を 90 日間無償で利用可能
(以上、各社の公式情報より引用)
さて、いずれも記載されている項目があったりなかったり... で、整理してみます:
★両者ともに持っている特長:
- Yosemite 対応
- コントロールセンター
- ライセンスポータル
- クローンマシン
- 期間限定の仮想マシン
- パフォーマンスの向上
- 16 CPU, 64GB メモリサポート
★PDE にしかない特長:
- ヘッドレスモード
- マイクロソフト社の SCCM へのプラグイン
- コマンドラインツール
- 仮想マシン Netboot 対応
- 仮想マシン FileVault
- Nested マシン
- Parallels Access(i デバイスからのリモートアクセス)
- 年間使用料形式
★VMF にしかない特長:
- VMware vSphere、ESXi または Workstation がホストしている仮想マシンへのアクセス
- VMware vSphere、ESX または Workstation への仮想マシンのアップロードおよびダウンロード
こうして整理して見ると、それぞれの方向性が見えてくる。
大企業で、自前のサーバー群があり、そこにすでにVM製品を導入している場合は、ベンダーを増やさなくてもよいという理由から、VMF にメリットを見出せる。また、vSphere、ESX(i) との連携も大きな魅力となるだろう。ちょっと言い方を変えれば、VMF は vSphere ありきのコンセプトと言えなくもない。それにしても、価格が二倍になったのはどういう背景なのだろうか。
一方で、そういう事情がないのであれば、より Mac OS に深くコミットした Parallels は間違いなく良い選択肢と言えると思う。
マイクロソフト社の管理ツールを意識した仕様は、管理者にとっては非常にありがたい。また、年間使用料形式は、マイクロソフト社やアドビ社がそうであるように、時代の流れとも言える。年間契約さえしていれば、新バージョンが出た際に、いちいち面倒なアップグレードの手続きも必要なくいつでも最新のバージョンを使うことができる。さらに Parallels Access のように iOS への対応にもとても積極的だ。
前回のトピックにも書いたが、PD9 あたりから、Parallels 社の Mac OS, iOS へのコミットの深さが際立って見える。(それは細かいUI回りを見ても感じられる)
アップルストアが Parallels しか販売しないのも、そうした "スタンス" が影響しているのかもしれない。
筆者は今後も両社切磋琢磨して健全な競争を展開してほしいと強く願っています。一つしか存在しないセグメントは改革がなされず進化しなくなってしまう例を、私達はたくさん見てきましたものね。
さて、今回は、重箱の角をつつくような細かい視点からではなく、「導入の意思決定レベル」からの考察とし、次回から、実際の、現場のユーザーにとっての使いやすさなどに焦点を当てて考察したく思っています。
以上、主に管理者、意思決定者のみなさんへの【ざっくり速報】でした。
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