今回は写真やiTunesのデータをバックアップする(その2)として、「Personal Backup の使い方」を説明しようと思っていたのですが、現在では、バックアップメディアもいろいろなものが出現してきているため、少しここでバックアップの意味と、それに必要なバックアップメディアについて考えてみたいと思います。
バックアップは面倒なものですが、この世の中に1つしかないデジタルデータを守るためにはバックアップをすることが必要だということは、皆さんもお分かりいただけることでしょう。
たとえば、お子様の成長記録の写真。昔はフィルムの写真で撮影し、それを現像してアルバムに大切に貼っておきました。写真は保存状態さえ良ければ100年以上前のものを紙で保存しておくことができるそうです。
ちなみに、原板も現存する世界最古の写真は、フランスの発明家ニセフォール・ニエプスが1825年に撮影した「Un cheval et son conducteur(馬引く男)」というもので、すでに今から191年も前のものです。これは写真を撮影するメディアにアスファルトの一種を使っているため、保存状態が良ければ私たちは今でも写真を見ることができます。
(写真は「Un cheval et son conducteur(馬引く男)」 Wikimedia Commons より)
メディアの特性
記録をするメディアの特性を考えてみましょう。「馬引く男」は原板を壊さずに保存していたため、191年経った今でも私たちは歴史を見ることができます。他にも多くの古い写真--例えば坂本龍馬の写真などは有名ですがあの写真も150年前のものです--を私たちは知っています。これは保存状態などにもよりますが、昔ながらの技術でも100年以上保存することができることを意味していると思います。
では、21世紀の現代ではどんなメディアに保存するのが良いのでしょうか?ご存知のようにデジタルメディアがこの世の中に登場してから数十年程度しか経っていないため、実際の検証はできていません。なので、ここではあくまで仕組みからわかる技術的な耐用年数を考えてみたいと思います。
フラッシュメモリに保存をする
現代ではデジタル一眼レフや iPhone などを使って写真を撮ることが増えました。もちろん、これらはコピーはしやすいですし、写真アルバムを何冊も用意せずにフラッシュメモリを使ったSDメモリなどに保存しておくことができます。このフラッシュメモリは衝撃などには強いため、持ち歩く際のメディアとしてはとても優秀です。また、書き換えの速度も比較的高速なので、大きな容量のコピーなどでもあまりストレスを感じないという魅力があります。ただ、データの保存年数としては、一般的にデータを保存したフラッシュメモリを通電をさせない状態でそのままにしておくと5〜10年でデータが消えるということが言われています。中には価格の安い粗悪なUSBメモリを使って半年ほどで中身が消えてしまったということも聞いたことがあります。
【フラッシュメモリー】長期間の放置でデータが消える - 寿命は5〜10年
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/knowhow/20141205/1149803/
現在、フラッシュメモリは64GBのSDメモリカードで4,000円程度でしょうか。
1GB辺りの単価は 4000 / 64 = 62.5 円程度となります。
光学メディアに保存をする
CDやDVD、Blu-rayといった光学メディア。1982年にCDが本格的に生産され、レコードの代わりに音楽を供給するメディアとしてデビューします。コンピュータのデータ記録用ということでは、1989年には実用化され「マルチメディア」という言葉ももてはやされました。現在ではDVD-RやRWといった自分のパソコンから光学メディアに書き込みも可能で、メディア自体の耐用年数は10年ほどと言われています。ただし、こちらは温度や湿度、そして紫外線により経年劣化もあり、またメディアを製造したメーカーによってもバラツキが見られるようです。そして、記録面を傷つけたりすると読み出すことが難しくなるため、扱いについては慎重に行う必要があります。
光学ドライブは、現在発売されている Mac には搭載されていません。そして、書き込みはとても遅いです。また、DVD 規格では 4.7GB 程度の容量しか持ち合わせていないため、大容量のデジタル一眼レフの写真などには不向きと言えます。
メディアの寿命はこうして推定する DVDは百年もつか
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070720/277930/
DVD-Rメディアはとても安くなっています。4.7GB のブランクディスクが100枚で3000円程度でも売られています。
したがって、1GB辺りの単価は 3000 / 470 = 6.38 円程度となりフラッシュメモリの1/10程度となります。
外付けハードディスクドライブに保存をする
現在ではデジタルテレビに接続して録画に使っているという方も多いかと思います。ハードディスクドライブ(HDD)は、10年ほど前まではどんな Mac にも内蔵され、システムやアプリケーション、データなどを保存しておくための標準的なメディアでした。現在では SSD などに取って代わられてますが、外付けHDD を TimeMachine などのバックアップメディアとして利用している方は多いかと思います。寿命については、物理的に磁気ディスクが高速で回転し、とても絶妙なバランスで成り立っているメディアなので、動作中に動かすなどするとすぐに壊れてしまいます。しかし、バックアップとして考えると、温度と湿度が調整された環境でHDDを保存している限りフラッシュメモリや光学メディアのような経年劣化はまずないと言っても良いそうです。
ハードドライブの平均寿命は? 使わなければいつまでも壊れない?
http://www.lifehacker.jp/2015/05/150530_hddlimit.html
このHDDですが、現在では 2TB のものでも1〜2万円程度ととてもビットあたりの単価は安くなってきています。また、USB 3.0 や FireWire 800、Thunderbolt といった高速インターフェイスのものであれば、書き込み速度もとても高速です。USB3.0 のインターフェイスを持った 2TB の HDD でも1万円程度で販売されているものもあります。
こちらの 1GB 辺りの単価は 10000 / 2048 = 4.88 円程度となり、光学メディアよりも単価は安くなっています。
クラウドストレージに保存をする
現代ではクラウドストレージが注目を浴びています。Apple の iCloud 、 Dropbox や OneDrive 、 Google Drive といったストレージです。ネットワークに接続されていれば、自動的に同期をしてくれるなど、Wi-Fi に接続された MacBook を使っていると、とても便利に利用することができます。複数台数の Mac / PC の間でのファイルの共有、また iPhone などのスマートフォンとの連携など、クラウドストレージはとても多くのクラウドストレージは 20GB 程度までは無料で利用できるようになっていますが、例えば iCloud ストレージの場合には 1TB を利用すると年額 15,600 円が、Dropbox ストレージの場合には 1TB で年額 12,000 円が必要となります。
1TBを1年間利用した場合の単価は 12000 / 1024 = 11.72 円となります。
クラウドストレージの場合には、月々や年間のサブスクリプション料金なので、バックアップを10年間置いておきたい場合には Dropbox で 12 万円。1TB のバックアップで1GB辺りの単価は 117.2 円ということになります。
ただし、Google フォトなどのクラウドサービスを利用すると、1枚の写真は一定以下のサイズという制限はつきますが、無料で無制限枚数の保存に利用することができます。
Google フォト - 思い出を何枚でも保存、見たいときにはすぐに ...
バックアップにはどのメディアを選ぶべきか?
ということで、この辺りで、メディアの特性を考えながら、バックアップはどのメディアに行うのが良いのか?という疑問に対する結論を書いてみたいと思いますが、その前にバックアップの意味について、もう少し書いてみます。
デジタル社会ではバックアップはとても重要です。会社の書類や家族の写真や動画、そして録音されたサウンドファイル。これだけネットワークが発達した社会になっても、世界中で自分しか持っていないデータは多くあります。
この中で、子供の子供などに引き継ぐデータは「長期間の保存」をすることが重要となってきます。しかしながら、法律で保存年数が決まっている書類や、住所録といったやろうと思えば復元ができるデータについては、あまり長い年月を保存するよりも、取り出しや保存がしやすいものを選びたいとも思います。なので、データの内容によってバックアップメディアを変えるというのが、1つのスタイルになるのかな?と思っています。
長期間保存したい「この世に1つしかない写真やビデオ」のバックアップ。テラバイト級のデータ容量となると HDD 1択ということになると思われますが、そこまでの容量は必要ないという方もいらっしゃると思います。200GB〜500GB程度であれば、利便性を考えてしまうとクラウドだけでも良さそうです。ただ、クラウドサービスはいつサービスが中止になるかは不明ということもあるから、やはり手元に置いておきたい、という場合はクラウドとHDDの組み合わせが便利ではないかと考えます。
写真.app のライブラリファイルをそのまま外付けHDDにドラッグ&ドロップ(通称 Finderコピー)することでもバックアップは可能です。またクラウドストレージ用のフォルダを外付けHDDに Finder コピーしても良いかもしれません。
しかし、いくら動かさなければ耐用年数は長いと言われているHDDとはいえ、1万円のHDDでは少々心許ないのも事実です。なので、数年ごとにまるっとクローンを作るなんてことも必要になってきます。
この辺りをどうやって解決するか?様々なバックアップ手法を行っている方もいらっしゃるかと思いますが、私の行っているバックアップ手法を Personal Backup の使い方も含めて「その3」でご案内させていただく予定です。
乞うご期待
-NO
こちらも超必読!→ 関連FAQ: Personal Backup はじめてのバックアップ方法
<追記>
act2 のTwitterアカウントで、Twitterのアンケート機能を使った簡単なアンケートを実施しました。結果は以下の通りです。アンケートにお答えいただいた皆さん、どうもありがとうございました!
《アンケート》この世の中に1つしかない写真やビデオのバックアップはどこにしておきますか?※こちらのツイートは Twitter 投票を利用しています(Web や 公式 Twitter クライアントにてアンケート選択が可能です)— act2, Inc. (@act2com) 2016年3月7日
*本記事に掲載している価格については、筆者がECサイトなどで調べた平均的な価格になります。
0 件のコメント:
コメントを投稿