序章では、仮想マシンの背景と基礎について、第二章では、仮想マシンの構築と様々な可能性について述べてきました。
この第三章では、仮想マシンの安全性について述べてみたいと思います。
VMware FUSION のユーザさんの多くは、目的は Mac で Windows を動かすことと思われますので、その線で述べていきます。
通常のリアルな Windows PC について考えてみましょう。これは Mac でも同じですが、ハードディスクがイカれる危険性は常にあります。
ハードディスクが不良品だったり寿命だったりという純粋なハードウェアに起因するものと、ファイルシステムが何らかの理由でおかしくなり正しい動作ができなくなる場合とがあります。よくあるのは、後者の一種で何かソフトウエアをインストールしてから調子が悪くなった、という話です。もっともハードウェア的に故障したという話もよく聞く話です。
どちらににしても、困りものです。多くの人はそうしたことに遭遇して初めてバックアップの有りがたさを知ることになります、(私もそうでした)。
さて、リアルな PC も Mac も、結局のところバックアップを取っておくことが「最後の砦」になるわけです。仮想マシンの場合でも同様です。
インストールされて構築された仮想マシンは、ホスト OS (例えば Mac であれば Mac OS)の管理下において1つのファイルとして管理されているため、バックアップも容易ですし、トラブル時の復旧も「リアル PC」よりはるかに楽なのです。
できれば本体とは別のハードディスクにコピーしておくと良いでしょう。(同じハードディスク内ではそのハードディスクがイカれた場合、意味がありません)
さらに VMware FUSION には「キャプチャー」と呼ばれる機能があります。
今さら聞けない「キャプチャー」について (^^
キャプチャーという機能・概念は古くからバックアップソフトウェアで実現されているもので、実行中の仮想マシンの構成、状況、データを、言わば「撮影」して保存する、というものです。
すると、キャプチャー自体がバックアップと同じことなのか、と思われがちですが、キャプチャーとバックアップは根本的に異なります。
バックアップはシステム全体をデータと共に全て複製して保存していますが、キャプチャーは、その時その時の各ファイルの位置情報だけをチェックして保存しているのです。
ですから、キャプチャーファイルはバックアップファイルよりずっと小さいですが、元になる全体の実体が無くては意味のない存在です。VMware FUSION で考えてみると、最悪の場合、例えば、Windows の仮想マシンファイル自体が無くなってしまって、キャプチャーデータだけが残っていても復旧はできません。ですから、まずはバックアップをとって、その後キャプチャーを撮っていくことが大切です。
VMware FUSION では、この便利なキャプチャー機能を実装していますので、ぜひ活用してください。Windows マシンは自動度が高い分、逆にリスクも大きいと言えます。「このソフトウェアをインストールする前の状態に戻りたい」ということはよくある話です。VMware FUSION のキャプチャー機能は指定した一定時間ごとに撮られていきますが、何かをインストールする前に手動でキャプチャーを撮っておけば万全です。インストール後に何か問題が起きても、直前にキャプチャーした時点の状態に、簡単に戻すことができるのです。
余談ですが、ご存知のように、Mac OS には TimeMachine というバックアップ機能がありますが、仮想マシンもその対象になっていると、少しの変化があっただけででも全体のバックアップを取ろうとしますので、あっという間にバックアップ用のハードディスクを大きく消費してしまいます。 TimeMachine のバックアップ対象からは外して、先に述べたように手動でどこかにバックアップコピーと取っておくことをオススメします。そのうえでキャプチャー機能を活用しましょう。
仮想マシンの安全な活用のためには、まずはバックアップを取る、そしてキャプチャーを撮っていく。この2つを守っていれば、何か問題が起きた時もそう慌てることはありません。
このように VMware の仮想マシンは、さすがサーバマシンからスタートしているだけに、安全運用のための最善の創意工夫がなされています。
以上、3 回に分けて、仮想マシンの原理原則的なことを述べてきました。次回からはこれらの基礎を踏まえて VMware FUSION 自体に焦点をあてて解説していこうと思います。
( MikiyaKato )
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